2022年8月11日、日本の半導体産業復権を目指す新会社「ラピダス」が設立された。
社長に就任したのは、日立製作所出身で半導体業界に身を投じて40年以上の小池淳義氏(73歳)。
かつて日立と台湾UMCの合弁会社トレセンティテクノロジーズの社長として「半導体復権の旗振り役」を担い、実質的な失敗に終わった苦い経験を持つ小池淳義氏にとって、ラピダスは雪辱を果たす絶好の機会だった。
政府は2025年11月21日、ラピダスへの支援を2026〜27年度に約1兆円追加すると発表。累計の政府支援額は2.9兆円に達し、1企業に対する史上最大規模の税金投入となった。
2027年に世界最先端の2ナノメートル半導体の量産を目指すラピダス。しかし、民間出資はわずか73億円にとどまり、量産までに必要な5兆円〜7兆円の大部分を政府支援に依存する構造に批判も出ている。
小池淳義氏の経歴、トレセンティの失敗、ラピダスの事業計画、そして累計2.9兆円の巨額税金投入の真相を徹底解説する。
小池淳義のプロフィール

https://www.asahi.com
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏名 | 小池淳義(こいけあつよし) |
| 生年月日 | 1952年生まれ(73歳・2025年時点) |
| 出身地 | 千葉県(広島県呉市の高校出身) |
| 学歴 | 早稲田大学理工学部卒業(1976年)、早稲田大学大学院理工学研究科修了(1978年)、東北大学で工学博士号取得 |
| 現職 | ラピダス株式会社代表取締役社長(2022年8月〜) |
| 前職 | 日立製作所(1978年〜)、トレセンティテクノロジーズ社長(2002年)、サンディスク日本法人社長(2006年)、ウエスタンデジタルジャパンプレジデント(2018年) |
| 専門分野 | 半導体製造技術、生産技術、ドライエッチング |
| その他 | 日本社会人アメリカンフットボール協会会長、著書『人工知能が人間を超える シンギュラリティの衝撃』(PHP研究所、2017年) |
小池淳義氏は、日立製作所で半導体技術者としてキャリアをスタートし、生産技術本部長を務めた後、経営者に転じた。
2002年にトレセンティテクノロジーズ社長に就任したが、会社は実質的に失敗に終わった。
その後、サンディスク、ウエスタンデジタルで経営手腕を発揮し、2022年8月にラピダスを設立。
「日本には半導体をちゃんとつくれる技術がある」と述べ、トレセンティでの失敗を乗り越え、日本の半導体産業復権に再挑戦している。
小池淳義氏の技術思想や半導体産業への見識について詳しく知りたい方は、氏の著書『人工知能が人間を超える シンギュラリティの衝撃』をおすすめします。
詳しい経歴──日立製作所からトレセンティ、そしてラピダスへ

日立製作所時代──半導体技術者としての40年
小池淳義氏は1952年、千葉県に生まれた。
広島県呉市の高校を卒業後、早稲田大学理工学部に進学。

卒業論文はアルミ合金の単結晶の転移現象を研究した。
1978年、早稲田大学大学院理工学研究科を修了後、日立製作所に入社。
日立の半導体のメッカといわれる武蔵工場に赴任し、ドライエッチングの開発に取り組んだ。
その後、社会人として東北大学大学院で大見忠広教授のご指導のもと、博士号を取得した。
日立時代の主な実績:
- 生産技術センター第一生産技術部長
- 半導体グループ生産統括本部生産技術本部本部長
- 那珂工場の300mmウエハーの新ライン立ち上げ
小池淳義氏は半導体の技術開発に従事し、日立の生え抜きの半導体技術者として経験を積んだ。
トレセンティテクノロジーズの挫折(2002年〜)
2000年、日立と台湾UMCの合弁会社トレセンティテクノロジーズが設立された。
小池淳義氏は取締役に就任し、2002年3月に社長に就任。
トレセンティテクノロジーズは、「半導体復権の旗振り役」として大きな期待を受けた。
社名はラテン語で「300」を意味する「Trecenti」に由来し、300mmウエハーの最先端半導体製造を目指した。
しかし、トレセンティは実質的な失敗に終わった。
失敗の要因:
- 日立の経営方針の転換
- 日本政府のおぼつかない先導によるマスタ・ファブ構想の崩落
- トレセンティ自体の経営戦略の失敗
- 半導体市場環境の変化
小池淳義氏にとって、トレセンティの失敗は生涯忘れられない経験となった。
「なぜトレセンティは失敗したのか」。20年の間、小池淳義氏は頭の中で繰り返し自らに問うてきたに違いない。
サンディスク・ウエスタンデジタル時代(2006年〜2022年)

https://www.bcnretail.com/
2006年8月、小池淳義氏はサンディスク株式会社代表取締役社長に就任した。
2018年4月からは、株式会社HGSTジャパン代表取締役・ウエスタンデジタルジャパン株式会社代表取締役を兼任し、日本のウエスタンデジタルを代表するプレジデントとなった。
サンディスク・ウエスタンデジタル時代、小池淳義氏は経営者としての手腕を発揮した。
この期間、小池淳義氏はトレセンティでの失敗を教訓に、経営戦略を磨いた。
ラピダス設立──雪辱の機会(2022年8月)
2022年8月11日、小池淳義氏は新会社「ラピダス」を設立し、代表取締役社長に就任した。
ラピダスは、小池淳義氏が命名した社名で、ラテン語で「速い」を意味する。
トレセンティと同様、ラテン語に由来する社名であり、小池淳義氏のこだわりが感じられる。
ラピダスの設立記者会見で、小池淳義氏は「日本には半導体をちゃんとつくれる技術がある」と力強く述べた。
小池淳義氏にとって、ラピダスの設立は、トレセンティでの失敗を乗り越え、雪辱を果たす絶好の機会だった。
小池淳義氏のように技術者から経営者へとキャリアを築きたいエンジニアには、技術と経営の両面を学べる書籍やMBAプログラムがおすすめです。
ラピダスとは何か──2ナノ半導体量産を目指す国策企業

ラピダス設立の背景──米IBMからの電話

ラピダス設立の発端は、東哲郎会長(東京エレクトロン元社長)に米IBMから連絡があったことだった。
2019年頃、米IBMは東哲郎氏に「日本で最先端半導体を製造する会社を作ってほしい」と打診。
背景には、経済安全保障に関連した米政府の思惑があったと報じられている。
米国は中国に対抗して最先端の兵器を大量生産するため、「経済安全保障」と称して、同盟国を巻き込んでの半導体の生産体制構築を打ち出していた。
日本政府はこれに呼応して、ラピダスの設立を支援した。
会長・東哲郎と社長・小池淳義──対照的な2人

https://www.jiji.com/
ラピダスの設立記者会見に現れた2人は、対照的な印象を与えた。
東哲郎会長:
- 東京エレクトロン元会長・社長
- 半導体分野の「ドン」のような存在
- どっしりとした風格、重鎮という言葉がふさわしい
- 口数は少ない
小池淳義社長:
- 日立製作所出身の生え抜き半導体技術者
- 余裕ある笑顔をたたえ、70代とは思えない若々しさ
- 壇上で語る姿は活力に満ちている
2人とも70代前半と年齢は近いが、受ける印象は対照的だ。
東会長が重鎮として全体を見守り、小池社長が前線で陣頭指揮を執る構図である。
2ナノ半導体とは何か──世界最先端技術
ラピダスが目指すのは、回路線幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートルの次世代半導体の量産である。
2ナノ半導体の特徴:
- 現時点では世界一の技術
- スーパーコンピューターや人工知能(AI)などに使用
- 高性能・低消費電力
小池淳義社長は「我々が目指す2ナノは現時点では世界一の技術だが、一つの通過点であり、この半導体をうまく使った最先端の技術を生み出すことに価値がある」と述べている。
ラピダスは、設計から製造までのスピードを重視する。
従来の半導体は、設計だけで何年もかかっていた。
ラピダスは、設計から製造までの期間を今の半分にすることを目指している。
北海道千歳市への立地理由

https://www.nikkei.com/
ラピダスは、工場を北海道千歳市に建設することを決定した。
北海道を選んだ理由:
- 人材獲得競争を避ける(九州は既にTSMC熊本工場があり競争が激しい)
- 北海道大学はじめ地元の大学を出た人材が道外に出ている現状を活用
- 世界中から優秀な技術者、研究者を呼び込める
- 地元の経済活性化
小池淳義社長は「北海道バレー構想」を掲げている。
苫小牧から千歳、札幌、石狩市にかけて半導体の関連会社を集積し、シリコンバレーのようにするという考え方である。
政府支援累計2.9兆円──史上最大規模の税金投入

2022年度〜2024年度:累計1.7兆円超の支援
ラピダスは2022年8月11日に設立されて以来、政府から継続的に支援を受けてきた。
初期の政府支援:
- 2022年度:研究開発向け補助金開始
- 〜2024年度:累計1.7兆円超の支援決定
- 支援の名目:ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業
政府はラピダスの研究開発に対して、総額9,200億円の補助を決定した。
2025年3月31日:8,025億円追加支援(累計1.8兆円超)
2025年3月31日、経済産業省は、ラピダスに対し2025年度に最大8,025億円の追加支援を行うことを決定した。
2025年度支援の内訳:
- 前工程:最大6,755億円
- 後工程:最大1,270億円
- 政府出資:1,000億円
累計支援額は1兆8,225億円に達した。
ラピダスは2025年4月から北海道千歳市の工場でパイロットラインの稼働を開始した。
2025年11月21日:1兆円追加支援発表(累計2.9兆円)

2025年11月21日、経済産業省は、ラピダスへの政府支援を2026〜27年度に約1兆円追加すると明らかにした。
2026〜27年度支援の内訳:
- 2026年度:約6,300億円の補助金 + 1,500億円以上の出資
- 2027年度:約3,000億円の補助金
- 2027〜28年度:現物出資(数千億円規模)
累計の支援額は2.9兆円に及ぶ。
各年度の予算案に計上し国会の審議を経る。
ラピダスは2031年度の株式上場を目指している。
赤沢亮正経産相は「ラピダスは政府が進める危機管理投資の要であり、国益のために必ず成功させなければならない国家的プロジェクトだ」と述べた。
量産までの総額5兆円〜7兆円──民間出資はわずか73億円
ラピダスが2027年に2ナノ半導体の量産を開始するまでには、5兆円〜7兆円規模の資金が必要と試算されている。
資金調達の現状:
- 政府支援:累計2.9兆円(2025年11月時点)
- 民間出資:73億円(トヨタ自動車、NTT、ソニーグループ、NEC、ソフトバンク、キオクシア、デンソー、三菱UFJ銀行)
- 不足分:約3兆円
民間出資がわずか73億円にとどまっていることが大きな問題となっている。
武藤容治経産相(当時)は「1社に対して兆円規模の補助金を措置した事業はない」と認めた。
日本の半導体産業復権と政府の経済安全保障戦略について理解を深めたい方には、関連書籍をおすすめします。
批判と課題──エルピーダの教訓と「税金の無駄遣い」論

https://jbpress.ismedia.jp/
エルピーダメモリの失敗──277億円の国民負担
ラピダスへの巨額税金投入を語る上で避けて通れないのが、エルピーダメモリの失敗である。
エルピーダメモリは、政府主導で設立された半導体メーカーだった。
エルピーダメモリの経緯:
- 政府が400億円の公的資金を投じた
- 2012年に経営破綻
- 約277億円が国民負担となった
共産党の辰巳孝太郎議員(当時)が国会で「誰がどのような責任をとったのか」と追及したところ、武藤容治経産相は「責任をとったことはない」と答弁した。
委員室にどよめきが起きた。
「誰も責任をとらない」構造

エルピーダメモリの失敗で明らかになったのは、「誰も責任をとらない」構造である。
問題点:
- 政府主導のプロジェクトが失敗しても、官僚は責任を問われない
- 国民の税金が失われても、誰も処罰されない
- 同じ失敗が繰り返される可能性
ラピダスについても、同様の懸念が指摘されている。
銀行融資が集まらない理由──リスクの高さ
ラピダスは量産に必要な資金を主に銀行融資で賄う計画だった。
しかし、銀行は5兆円規模の巨額の融資に慎重だった。
銀行が融資に慎重な理由:
- ラピダスは設立から間もなく実績がないベンチャー企業
- 最先端半導体技術への挑戦はリスクが高い
- 半導体の生産実績もない
銀行は「リスクが高すぎる」と判断し、融資に二の足を踏んだ。
政府保証と債務保証──国民負担のリスク

銀行融資を実現させるため、政府は政府保証を付けることを検討。
2025年4月25日、情報処理推進機構(IPA)に金融業務を追加する改正法が成立した。
改正法の内容:
- IPAを通じて政府が出資できるようになる
- IPAが次世代半導体事業者による民間金融機関からの借り入れに債務保証を付けられる
しかし、仮にプロジェクトが上手くいかなければ、ラピダスが銀行から借りた金を国が肩代わりして返済することになり、国民負担となる可能性が出てくる。
野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト木内登英氏は「安易な支援は、むしろラピダスのビジネスが成功する可能性を低下させ、そうしたリスクを自ら手繰り寄せてしまう恐れがある」と警告している。
軍事転用の懸念──米国防総省の思惑と日本の役割

東哲郎会長の発言──「国防の領域」「アメリカに届ける」
2023年、ラピダスの東哲郎会長は講演で以下のように発言した。
東会長の発言:
- 「重要な部分は何かというと、国防の領域」
- 「そういう半導体を、まずはアメリカに届ける」
この発言は、ラピダスが製造する半導体が米国の兵器に利用されることを示唆している。
共産党の辰巳孝太郎議員は国会で、ラピダス幹部自身が米兵器への利用を語っていることを告発した。
経産省「半導体・デジタル産業戦略」の軍事利用明記

2023年6月、経済産業省が作成した「半導体・デジタル産業戦略」には、軍事利用に関する文言が躍っている。
戦略に明記された軍事利用:
- 極超音速
- 地対地ミサイル
- 空対地ミサイルへの適用
- 高速移動可能な軍用偵察機
辰巳議員は「米国防総省の思惑に『ぴしっとはめていく』という経産省の方針と符合している」と指摘した。
米国防総省の発注を担わされるリスク
辰巳議員は国会で以下のように警告した。
辰巳議員の警告:
- 「米国防総省の発注する『発注量が少なく利益の出ない』軍用半導体の納入をラピダスが担わされ、赤字で破綻したら日本国民の負担」
- 「ラピダスが作った半導体が組み込まれた米国のミサイルを日本が爆買いする構図になる」
米国は中国に対抗して最先端の兵器を大量生産するため、同盟国を巻き込んでの半導体の生産体制構築を打ち出している。
日本はその「歯車」として組み込まれているという指摘である。
現在の自衛隊幹部については、以下の記事で詳しく解説している。
日米首脳会談と「経済的威圧への対抗」

2025年2月7日の日米首脳会談で発表された共同声明には、以下の内容が明記された。
共同声明の内容:
「…先端半導体といった重要技術開発」で「(中国による)経済的威圧への対抗」
ラピダスへの「国費投入」「日米連携」の方向性を決めてきた経産省の「戦略検討会議」の座長は、ラピダスの東哲郎会長が2021年から務めている。
また、ラピダスの特別参与には元経済産業事務次官の嶋田隆氏が就任している。
辰巳議員は「公共政策をゆがめる利益誘導や、大企業と政府の癒着がまかり通ることは絶対にあってはならない」と強調した。
日本の経済安全保障と米中対立の構図について理解を深めたい方には、専門書をおすすめします。
ラピダスの今後──2027年量産開始、2031年株式上場計画

https://www.nhk.jp/
2025年4月:試作ライン稼働開始
2025年4月、ラピダスは北海道千歳市の工場「IIM-1」で試作ラインを立ち上げた。
試作ラインでは、2ナノメートル半導体の製造プロセスを検証する。
政府は試作向けの製造装置の購入や、生産管理システムの開発費用を支援している。
小池淳義社長は「毎月入社式をしていて、30人ほどが次々に入ってくる。その平均が50歳ということになるが、まなざしはギラギラしている」と語った。
採用状況:
- ラピダスがいま欲しいのは即戦力
- 英語ができて、入社してすぐに米オールバニに派遣されて技術を習得
- 2年間で技術移転の作業を終えなければならない
- 技術者の応募は面接者が足りないほど
- 海外で仕事している技術者も「日本でそういう動きがあるなら、ぜひ参画したい」と志の高い人が多い
2027年:2ナノ半導体量産目標
ラピダスは、2027年度後半に2ナノメートル半導体の量産を開始する計画である。
従来は「2027年」と説明していたが、より具体的に「2027年度後半」とした。
世界でまだ商用化の例がない回路線幅2ナノメートル相当の次世代半導体の量産は、技術的に極めて困難な挑戦である。
小池淳義社長は「常識では出来ないことをやる」と述べている。
2030年度:営業黒字達成計画
ラピダスは、2030年度ごろに営業黒字を達成する事業計画を経産省に提出した。
2027年度に2ナノメートル半導体の量産を始めるのに続き、1.4ナノも量産を目指す。
しかし、2030年度に営業黒字を達成できるかどうかは不透明である。
2031年度:株式上場目標

ラピダスは、2031年度ごろの株式上場を目指している。
株式上場により、民間からの資金調達を本格化させる計画である。
しかし、2031年度までに量産が軌道に乗り、黒字化が実現できるかどうかが鍵となる。
国会審議では、ラピダスへの政府のガバナンス姿勢が問われた。
出資を通じて株主になると同社への過度な関与につながることが懸念される。
外資企業による買収などを防ぐため、重要議案を否決できる「黄金株」を政府が保有する可能性もある。
小池淳義社長は「黄金株のような形を政府と詰めている」と話した。
現在話題、注目されている財界人、経営者については、以下の記事で詳しく解説している。
まとめ──小池淳義氏とラピダスの挑戦、そして国民負担のリスク

https://www.nikkei.com/
トレセンティの失敗を乗り越えて──小池淳義氏の雪辱戦
小池淳義氏は、2002年にトレセンティテクノロジーズの社長として「半導体復権の旗振り役」を担ったが、実質的な失敗に終わった。
「なぜトレセンティは失敗したのか」。20年の間、小池淳義氏は頭の中で繰り返し自らに問うてきた。
2022年8月、ラピダスの設立は、小池淳義氏にとって雪辱を果たす絶好の機会となった。
小池淳義社長は「日本には半導体をちゃんとつくれる技術がある」「先端半導体の量産で、失われた30年を取り戻す」と述べている。
累計2.9兆円の税金投入──史上最大規模の国策企業

政府のラピダスへの支援は、2025年11月時点で累計2.9兆円に達した。
1企業に対する史上最大規模の税金投入である。
武藤容治経産相は「1社に対して兆円規模の補助金を措置した事業はない」と認めた。
政府支援の内訳:
- 〜2024年度:累計1.7兆円超
- 2025年度:8,025億円
- 2026〜27年度:約1兆円
- 累計:2.9兆円
一方、民間出資はわずか73億円にとどまっている。
量産までに必要な5兆円〜7兆円の大部分を政府支援に依存する構造である。
成功すれば日本復権、失敗すれば国民負担
ラピダスが成功すれば、日本の半導体産業は復権し、経済安全保障上も大きな意義がある。
しかし、失敗すれば、エルピーダメモリの二の舞となり、巨額の国民負担が発生するリスクがある。
懸念される問題点:
- エルピーダメモリの失敗で誰も責任をとらなかった
- 政府保証により、失敗時の負担は国民に転嫁される
- 銀行融資が集まらないほどリスクが高い事業
- 米国防総省の思惑により軍事転用される可能性
野村総合研究所の木内登英氏は「安易な支援は、むしろラピダスのビジネスが成功する可能性を低下させる」と警告している。
権力ウォッチの視点

『権力ウォッチ』は、ラピダスと政府の関係について以下の点に注目する。
注目ポイント:
- 小池淳義社長はトレセンティの失敗を教訓にできるか
- 累計2.9兆円の税金投入は適切か
- 民間出資73億円という極端な官民バランス
- 政府と企業の癒着──東会長が経産省戦略検討会議の座長
- 軍事転用のリスク──米国防総省の思惑
- エルピーダメモリの教訓──失敗時に誰が責任をとるのか
ラピダスは、日本の半導体産業復権を目指す壮大なプロジェクトである。
しかし、累計2.9兆円という史上最大規模の税金投入が行われている以上、国民には事業の進捗状況と成否を監視する権利がある。
『権力ウォッチ』は、ラピダスの動向を今後も追い続け、税金の使われ方を監視し続ける。
日本の半導体産業の歴史と未来について理解を深めたい方には、関連書籍がおすすめです。
【参考資料・出典】
本記事は以下の公開情報を基に作成されています。
公的資料・報道記事:
- 日本経済新聞(2022年11月〜2025年11月、ラピダス関連報道)
- 日経ビジネス(2023年6月「20年前にラピダスの原点、小池社長の苦い過去」)
- 東洋経済オンライン(2024年7月「ラピダス小池社長『常識では出来ないことをやる』」)
- nippon.com(2023年8月「ラピダスの小池淳義社長に聞く」前編・後編)
- 時事通信(2025年3月31日「ラピダスに追加支援8025億円」)
- Bloomberg(2025年3月31日「経産省、25年度はラピダスに8025億円を追加支援」)
- 共同通信(2025年11月21日「ラピダスに1兆円追加支援」)
- 赤旗(2025年2月19日「半導体企業ラピダスに税金投入/軍事転用 危険な思惑」)
- 野村総合研究所(木内登英氏コラム「ラピダス支援を念頭に政府は10兆円の半導体・AI支援を決定」2024年11月、「骨太の方針にラピダス量産支援を明記へ」2024年6月)
- ラピダス公式サイト(会社概要)
- 電子デバイス産業新聞(小池淳義氏インタビュー)
法令・制度:
- 情報処理促進法改正(2025年4月25日成立)
- ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業
注記:
- 本記事は公開されている報道情報および公的資料を基に作成されています
- 政府支援額は2025年11月21日時点の発表に基づいています
- ラピダスの事業計画は経産省への提出内容に基づいています
- 量産開始時期や株式上場時期は計画であり、変更される可能性があります
- 時系列は複数の報道機関の報道を照合し、正確性を確認しています
- 本記事は事実の客観的記述を目的としており、特定の政治的立場に偏らない中立的な記述を心がけています
- 批判的な意見と支持的な意見の両方を紹介し、バランスの取れた記述を心がけています










コメント